三方よしカレンダー

2024年2月15日木曜日

第194回三方よし研究会のご報告

194回 三方よし研究会を開催しましたので、以下の通り報告いたします。

◇日時:令和6215日(木) 18:3020:30
(当番:日野町・日野記念病院 )


○ゴール
地域とともに専門職が取り組めること
認知症の人にとって自分らしくととは 

【情報提供】 
3月の市民公開講座について:楠神


NPO三方よし研究会市民公開講座上映会を、3月10日(日)13301515(開場1230)に東近江市あかね文化ホール大ホールで開催しますので、ぜひご参加ください。また、メーリングリストに上映会のチラシを掲載しますので、SNS等で皆様からも案内していただけると幸いす。



【ごあいさつ】
日野町長 堀江和博 様
本日は医療福祉連携の三方よし研究会を日野町で開催いただきまして、ありがとうございます。


小串先生はじめ皆さまには、日頃よりご協力いただいており、ありがとうございます。能登半島地震には支援に私も参りました。現地では直接的な死亡より災害関連死が多くなっております。そのような環境の中、やはり少し抽象的な表現になりますが、孤独をいかに防ぐかが大切だと思います。一時避難所から仮設所に移る前に、2次避難で金沢市内の会館に移動しています。衛生環境も整えながら、ご尽力いただいています。そのような中、このような各専門職・団体等の連携を深める研究会は意義のあるものだと思いますので、よろしくお願いいたします。


【30分学習会】

認知症患者の初診時の診療について 日野記念病院 山田 伸一郎 先生私は2004年に就任しまして、認知症外来を担当しています。認知症の定義は、まず認知症は病名ではなく、症候群です。睡眠薬を飲み過ぎた、アルコール飲料を飲みすぎたなどで同様の症状がみられても認知症ではありません、多くの認知症は時間をかけて進行していきます。脳の機能が全体的に低下していき、生活に支障があることで認知症と診断されいます。          せん妄でも同様の症状がでますので、注意が必要です。

我が国の認知症患者は約600万人となっており、国民20人に1人と増えています。これは高齢化が最大の要因です。一番多いのはアルツハイマー型認知症で、他には脳血管性認知症、レビー正体型認知症、前頭側頭葉型認知症があります。

この4つの認知症については、なかなか治療が難しいですが、治せる認知症があります。治せる認知症は全体の1割であり、該当する方を見つけて治療することが大切です。
甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血種、アルコール依存症、ビタミンB1・B12の不足、うつ病、薬剤によるもの、てんかん、せん妄などがあります。ビタミンB1、B12の不足:3食べている人は大丈夫です。
認知症の最大の危険因子はお酒です。若いころから飲んでいると、発症するリスクが高くなります。

最初に認知症かと受診されたことは上記でないか確認した上で、検査を続けます。
認知症には中核症状と、周辺症状があります。認知症により記銘力、遂行機能低下など欠けていってしまうものがものが中核症状、これは薬では治せないので、介護などサポートすることで症状を抑えます。それに対して周辺症状は妄想、幻視や暴力などがあります。

診察時には中核症状と周辺症状を分けて聞き取ります。例えば暴力があるときは穏やかになる薬を処方します。
ここまでを踏まえて、実際物忘れ外来での初診患者の診察手順を説明します。最初に認知テストを実施します。

まずは内的な姿勢を整えます。高齢者をリスペクトして、尊敬と親しみを込めて接する。認知症患者さんは待てないの待ち時間の短縮を心がけています。1330からの診察開始ですが、実際は13:00から診察しています。
診察室に入られたら、まず歩き方のチェックをします。
アルツハイマー型認知症の方はさっそうと歩かれます。運動障害はないんですね。それに対して、パーキンソン病、正常圧水頭症は小刻み歩行などがみられます。
また、一人か家族同伴かも大切です。一人で来た人は認知症でない場合が多いです。
このように診察前にある程度、推測することができます。

最初はオープンクエッションで、例えば「今日はどうされましたか?」などと質問します。物忘れ外来に来ているのに、認知症とは異なる、腰痛があってなどと話し始められる方は認知症であることが多いです。逆に自分から最近物忘れがあってと、相談に来れる方は認知症ではないこと、また非常に軽度な状態であることが多いです。

次に家族構成について今、何人家族ですか?と質問します。
すらすら答えられたら認知症はほとんどなく、子供や孫の数が曖昧になると、認知症と推測されます。
既往症と嗜好、また持病や薬剤も把握します。飲酒・喫煙は認知症の大きな危険因子ですので注意が必要です。
そのようなことを確認した後に、身体所見をとり、その後に検査をおこないます。
病識のない方には、今日は「健康診断です」などと説明します。
認知症の疑いのある場合は、長谷川式テストの他、採血、BNP、HbA1c 甲状腺機能、胸部レントゲン、心電図などを行います。
周辺症状があれば、緊急性が高いです。暴力がある、徘徊するなどはメマリーなどの、大人しくなる薬を初日から処方します。それから、できるだけ早くに介護サービスを利用できるようにします。
認知検査の後、認知症の可能性が高ければ頭部MRIまたは頭部CTなども実施し、投薬を検討、生活指導など行います。
認知症が否定的であれば、経過を観察します。
以上が最初のステップとなります。

 【事例紹介】

「日野町における認知症施策の取り組みについて」 ~認知症キャラバンメイトとともに~ 日野町地域包括支援センター 長野芙沙恵 様 社会福祉士


 

日野町の現状は総人口20,858人、高齢化率31.38%と高齢化が進んでいます。
日野町の認知症施策の主な取り組みは、①早期発見と対応の充実、②認知症に関する普及啓発と認知症本人の社会参加の場づくり、④認知症予防活動の推進です。
9期の在宅介護実態調査によると、介護者が不安に感じる介護では「認知症状への対応」が25.7%と最も高くなっています。

②の認知症に関する普及啓発と認知症本人の社会参加の場づくりでは、日野町では35名の認知症キャラバンメイトさんと共に取り組んでいます。もっと熱心に活動したいとの意見があり、日野町認知症キャラバンメイト連絡会として組織化して取り組んでいます。
23か月に1回、連絡会で話し合いを進めています。活動内容は、①認知症キャラバンメイト連絡会での話し合い、②おもいでカフェ「茶のに処わたむき」、③「茶のみ処わたむきin図書館、④認知症サポーター養成講座、⑤オレンジフェスタ茶のみ処わたむき、⑥特別上映会「ケアニン」などです。

    認知症キャラバンメイト連絡会での話し合いでは、定期的に連絡会を開催し、地域での課題等を共有しています。また、居場所づくりの話し合いをしています。

    おもいでカフェ「茶のに処わたむき」では、「知る」「話をする」「聞いてもらう」ことができるカフェスタイルの交流場所です。

    「茶のみ処わたむきin図書館では、本の読み聞かせの他、認知症予防体操やゲームなどをしています。

    認知症サポーター養成講座では、中学生や小学生も対象にして養成講座を実施しています。小学校では「だいじょうぶだよ ぼくのおばあちゃん」の絵本を使用してわかりやすく説明している。

養成講座は平和堂さんにもスタッフの半数に受講していただいています。今年度はサポター養成研修を19回実施することができました。

養成講座修了者には、子供にはキッズサポータカード、大人には認知症サポーターカードを配布しています。

    オレンジフェスタ茶のみ処わたむき~やさしさでつながるみんなの笑顔~では、住民さんを対象に講演会等を実施しています。日野町長との対談も実施することができました。アンケートでは当事者の生の声を聞けてよかったとの感想などをいただくことができました。

 ○下坂厚さんの声

今後の方向性としては、
・認知症当事者の視点に立った居場所づくりについて検討。
・認知症サポーター養成講座の充実。
・チームオレンジについて検討
・認知症カフェの充実
を考えており、認知症の人が住み慣れた地域で生き生きと暮らせるあたたかい日野町になるように、キャラバンメイトさんと共に、活動をすすめていきたい。

 【グループワーク】
テーマ 「認知症になっても自分らしく生活するために」

  ① 地域とともに専門職が取り組めること
 ② 認知症の人にとって自分らしくとは

【発表】

1G:いろんな意見が聞けました。私たちは専門家として知識をもっているがために、どうしても診断に繋げようとしてしますが、それまでにその方がどのように生きてき、何を大事にしてきた、何をしているときにええ顔をしているとか、そのようなことをしっかりと把握し、関わる人たちと共有することが大事だと思いました。
若年性認知症の方は、デイサービスに行くと利用されている方が高齢だったり、作業所に行くと今度は若すぎたりと居場所がなく、薬剤師としてかかわっていた自分はすごく狭い範囲で認知症の人を見ていたと感じた経験もグループ参加者から伝えていただきました。
京都では当事者同士の会っていうのがあって家族もすごく大切なんだけれども、やっぱり家族が困ってること喋っちゃうと本人が喋らなくなっちゃうから、そのような場も大切だと思います。当事者の会のことの本を読んだ時に家族の会の人がちょっとイラッとしたみたいな発言もあり、それぐらい本人と家族の見える風景がことなることもあります。ありがとうございました ありがとうございます

2G:認知症の方に対する意思決定支援では、認知症の方の方針を決定する際に難しさを感じています。意思決定までのプロセスが大切。高齢者の支援をされている方からは、サポーターとしての上から目線ではなく、パートナーとして活動することに心がけたとの報告が私の心に残っています。家族に認知症の説明をされるときには、病気という説明をして認知症の理解が進むようにされているとの報告もありました。
また、認知症を発症する前の、普段から本人と今後について話をしていくことが大切だと感じました。

3G:「認知症の人にとって自分らしくは」、難しいお題であるが、高齢化にともなって、だれもが認知症になる可能性があるなかで、その人に関心をよせて、いつまでもその人が居心地よく地域で暮らしていける地域づくりというところが、自分らしい生活にもつながるのかなというようなお話がありました。それを実現するためにも、認知症を支援される家族さんへの支援も同様に大切。
また、専門職が取り組めることとして認知症理解を地域で深めていくこと、日野町さんの取り組みでもありましたように キャラバンメイトさんと共に啓発活動をしっかりやっていくこと、そして実際に一緒に関わっておられる方が、情報共有をしていくことも大事であり、多職種連携というところにも繋がってくるかと思います。そして認知症の方と一緒に暮らしていくという居場所づくりも大事なのかなというお話になりました。

 4G:患者さんの居場所つくりが大きな話題としてあがっていました。認知症患者さんのできること探しをすることが大切であり、これができるねと声掛けをしていくことが大事との話がありました。声掛け、言いやすい環境を作ることも大切。
私の祖母が認知症なのですが、麻雀が好きで、本人の趣味など大切にしていることをこれからも見つけていきたいと思います。社協さんからは認知症の支援にあたり、高齢者を巻き込んで、カラオケ教室の方の居場所を作ることができた、報告もありました。小串先生からは認知症の方を巻き込んでいくことが大切との意見をいただきました。仕事一本で来た人が認知症を発症した時に燃え尽き症候群で、死にたいといわれることもある。認知症になる前に、活動をノートにまとめたり、趣味を見つけていくことが大切ではと意見がありました。

5G:入院されている患者さんの方が、長い入院生活で在宅に戻るのが難しくなる現実があります。家族さんは入院後にもとの生活に戻れるかの不安を持っておられます。その際はケアマネさんに依頼して介護サービスを利用して、その人らしい生活に戻れるようなケアプランを作成してもらうのもよいとの意見がありました。
2年間かけてケアマネが患者さんのお話を聞いて、グループホームに移って生活をされている方の実事例の紹介もありました。その人を知って、支援していくことが必要ではと思います。

 

指定発言
認知症キャラバンメイト 加藤 悦朗 様
お話を聞かせていただいて、どこの地域でも安心してくらせる地域を目指していると思います。日野町の活動も報告させていただきましたが、質と効果について、まだまだ不十分だと感じています。高齢者が増えるなか、認知症患者さんも増えていく、その中でサポートする人も増やしていかないときいけない。キャラバンメイトだけでなく、地域の子どもから、大人までみんなに認知症理解を深めていくことが必要です。一番難しいのは、認知症の理解や、知っていただくこと、そういうことだけでは後が続かない現実があります。これからは「私もサポートしたい」と、そのような思いを持った人をどんどん増やしていきたい。気楽に相談できる環境を整備していくことが認知症の啓発活動につながります。活動の中でサポートの質と効果を考えていきたい、そこが一番大切かと思います。

近江温泉病院 認知症疾患医療センター 廣田 智恵理 様 保健師
皆さんからがそれぞれの立場で認知症について考えて発言してもらい、非常に勉強になりました。そのなかで、専門職はすぐに診断につなげたくなるのではとの意見で私のハッとさせられました。
認知症支援においては、どれだけ自分事して捉えられるかが大切かと思います。専門職として考える前に、自分が本人だったら、またはその家族だったらどのように感じるのか、その気持を日々忘れずに業務あたることが大切だと思いました。
専門職としては、今後の道筋を立てることが不安を解消することに、また本人、家族の負担を軽減するのにつながると思います。本日ありがとうございました。

 情報提供
発達障害のための研修会
令和635日(火)13301500ショッピングプラザアピア


 



次回のご案内
令和6310日(日)13:30~ 市民公開講座 オレンジ・ランプ上映会
東近江市あかね文化ホール 大ホール

2024年1月18日木曜日

第193回三方よし研究会開催のご報告

193回の三方よし研究会が開催されましたので、ここにご報告いたします。


日時;令和6年1月18日(木) 18:3020:30

会場:ZOOM活用によるWEBでの開催

(当番:国立病院機構(NHO)東近江総合医療センター)



【ゴール】

○ 問題点は何かを考える。

○ 問題点の改善(解決)方法や支援方法を考える。

○ 本人や家族に問題点を認識してもらい、必要な行動をして頂く。

○ 必要な支援を受けて頂き、地域で安心して暮らしていけるようにする。


全体進行 ; 小串輝男先生


【情報提供】 

一般社団法人 滋賀県医療ソーシャルワーカー協会研修会 令和6年210日(土)




○NPO三方よし研究会 市民公開講座 上映会 令和6310日(日)



 

進行:山本健さん(東近江総合医療センター)


30分学習会】

『東近江総合医療センターにおけるポリファーマシーへの取り組み』

東近江総合医療センター薬剤部 白崎佑磨さん 荒川宗德さん





①ポリファーマシーについて

・ポリファーマシーとは、多剤服用の中でも害をなすものをいう

・高齢者では6種類以上の投薬で有害事象の発生増加に関連したというデータがある

75歳以上の高齢者が1ヶ月間に1つの医療機関から処方される薬剤種類数は、約3割以上で6種類以上である

・ポリファーマシーべき取り組みによる服薬数減少は、アドヒアランス改善(飲み忘れの減少)、薬剤費抑制べき貢献になる

・日本の医療機関におけるポリファーマシーの認知度では、院内周知していない63.3%、手順書が存在していない93.6%にのぼる

・ポリファーマシー対策の指針・ガイドラインでは、『高齢者の医薬品適正使用の指針』『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』がある

・ポリファーマシー解消の取り組みに対しては診療報酬上の評価がある


②院内におけるポリファーマシーについて

・当院でも、持参薬を6剤以上内服している患者を対象に、薬剤師がチェックリストを用いてポリファーマシーについて評価を行っている

・また各種ガイドライン等を参考に、「特に慎重な投与を要する薬物リスト」一覧を作成し、電子カルテから閲覧可能とすることで、薬物有害事象の回避、アドヒアランス改善に繋げている

・また患者自己回答形式の「おくすり問診票」の活用について院内活用を準備中

20219月での新規入院患者266名の調査結果ではと、持参薬数6剤以上が40%、その中で75歳以上が占める割合は71%に上った

・入院中の解消患者に対し、個別の医師問い合わせ、各種診療科カンファレンスにおける自情報共有をもとに、退院時指導の時に併せて記録を作成している

・ポリファーマシーテンプレートで評価された患者のうち、特に介入機必要性の高い患者を対象に、週1回のカンファレンスを実施している

70代男性の症例報告では、8種類→6種類に減薬し効果が出ている



③地域とのポリファーマシー対策と今後の展開

・当院薬剤師と地域薬剤師との間では、入院時情報共有シート・退院時情報共有シート(薬剤管理サマリ)にて情報共有している

・また年1回東近江医療圏の病院薬剤師・保険薬局薬剤師が合同でポリファーマシーについて研修会を開いている

・地域でポリファーマシー対策を行っていく‘小さな芽を育てる会’の活動も行っており、ポリファーマシー地域合同カンファレンス(症例検討会)を開催している

・東近江医療圏の医師の先生方とも講演会・交流会を図りポリファーマシーについて考える機会を作っている

・地域へは、地域の老人会に訪問講演を今年は3回実施し、健康教室の一環として、当院薬剤師よりポリファーマシー対策の必要性について伝えている

・今後は当院だけでなく、地域に出向いて取り組んでいくこと、多職種と一緒に考えていくことを進めていきたい

・ポリファーマシー問題を進めるためには、多職種共同・情報共有がカギであるため、これからもどうぞよろしくお願いいたします



(質問/意見)

・症例、認知症・機能低下があるということでよかったか?‥そうです。

・ケアマネさんや地域包括支援センターは関わっていなかったのか?薬の数が多いことも問題だが、どの時間帯が飲み忘れがあるのかということも結構大事で、看護師やケアマネと一緒にカンファレンスを行っていくことが重要になってくるので。

・昨年の夏の薬剤師からのポリファーマシー発表の際には当院から来られていなかったようだが、薬剤師さん同士のつながり、特に薬剤師会とのつながりを聞きたい。また地域に出向いていく活動は非常にいい機会だと思うので、ぜひ継続してやっていただきたい。


 

【症例報告】 

『発達障害と思われる方とその家族』

東近江総合医療センター MSW 北村拓也さん



・関わることとなったきっかけとしては、母が当院へ救急搬送され、高度貧血と子宮頸部腫瘤で入院してきた際に、ケアにあたっている看護師より、経済的な不安や母に発達障害か知的障害あるかもしれないとの介入依頼があったこと

・調べると、祖父祖母、父、息子それぞれに事情があることがわかってきた

・そこで息子については市の障害福祉課へ連絡を取ったところ、以前にも関わりがあったことが分かってきた

・その後は、母は退院して他院受診することになり、息子へも訪問調整の運びとなった

 


進行:花戸貴司先生


【グループワーク】

テーマ『 発達障害と思われる方への支援について 』

このままの生活を続けると、どのような問題点の発生が考えられるか。

今回のようなご家庭に対してどのように関わり、どのような支援につなげることが出来るか

 

【発表】

<1グループ>

・まず、このままの生活を続けていったらどのような問題の発生が考えられるかということについては、息子さんの方がこのままでは引きこもりになってしまうというか、社会との繋がりがなくなってしまうのではないかという話が上がりました。

・次のこのようなご家庭に対して、どう関わって支援につなげていくのがよいかという話については、病院のソーシャルワーカーさんだけで全てを解決するのは難しいと思うので、途中からは行政の方に引き継いでもらい、手帳を取得するとか、サービスにつなげていくようにして、家から出て、社会の繋がりの中で、生きていけるように支援していけたら、1番いいんじゃないかという話が出ていました。 

・ただあの一家全体が、理解力が低下していらっしゃることで現状の認識が難しい状態から、無理に介入して行政などへの不信感が増してしまったらいけないので、気を付けて介入していく必要もあるのではないかという話が出ていました。

・息子さんにとって居心地の良い居場所、発達段階にあった場所への参加を取っかかりに していけたりとか、お母さんが養護学校などにつなぐことも止めてらっしゃったという過去があったということで、障害などのワードに対して結構過敏になっていらっしゃる可能性があるので、そういうワードは隠しながら進めていくっていうのも1ついいのではないかという話が出ていました。



<2グループ>

・まずは、入院されたお母さんが言われていたように、経済的な問題がまずは出てくるだろうというところで、祖父母の健康のこともあるし、きっと祖父の年金をあてにしてたりというところから、その方たちが不健康になった場合に生活自体が成り立たなくなっていく可能性があり、早期に介入が必要じゃないだろうか。

・また、祖父母の健康のところというところで、そこら辺の健康状態を確認する意味で、高齢福祉課の訪問だったり、そのあたりの困り事を話せるような人を見つけてつなげらればなというところもありました。

・今後息子さんが生活していく上で、就労につきどういうサポートが必要かも問題になってくるんじゃないか、高齢福祉課からの訪問事業だったりとか、発達支援センターなりいろんな課が市にもあるので、総合的に訪問把握していき、しかるべきところにつなげられればよいのかなという意見も出ました。

・またSOSが出せない家とか、制度の隙間にどうしても落ちてしまう家が今後も増えていったりするので、そういうところもどう拾っていくか。こういう入退院のときに、家族構成の把握から、生活の再構築ができるような支援ができるようになればいいなという意見もありました。



 <3グループ>

・この方のお父さんやお母さんがまた不安定になった場合に、生活の支援であったり、介護ができなかったり、救急車が呼べなかったりするという問題が1つ。あともう1つは、息子への介入が遅れることによって、どんどん就労のタイミングを逃してしまって、社会から孤立してしまうというのが問題点かなと出ました。

・そこでやはり行政が介入していく必要があるんですけれども、その行政が介入するハードルとしまして、やはり本人さんが困っていないと思ってることであったり、障害であることを受け入れられないということで、市役所に行くハードルがなかなか高いのかなと。で、おそらくお母さんの病気が治ったら病院に来なくなるだろうと思われるのですが、それは解決したのではなくて、問題が見えなくなっただけなので、やはり今まで関わってきた人が、積極的に「ねえねえ」と声をかけて関わり続けることが大事、病気が治った後でも、ケアマネジャーさんとか、民生委員の方とかが、ねえねえと、根気よく関わりつきけることが大事なんではないかという意見が出ました。そして、信頼関係をしっかり築いた上で、最終的には障害福祉課や、地域包括支援センターなどに繋いで、サービスが受けれるような状態にしてあげることが目標であるという風に意見が出ました。



 <4グループ>

・まずお母さんが退院できなかったら家族がバラバラになっていたかもしれないなか、退院できたことが一番よかったこと。

・息子さんに対しては、えっと、社会参加や能力配備、開発の機会が失われてしまうと。また今回のような、お母さんが入院されたりなどの場合、生活をする上でより問題が出てくるだろうということが予測されます。で、今回情報を取っていただいている中でも、主に支援センターなど、関係機関の方に少しは関わっているところはあるんですけれども、継続して関わっておられる方がいないというところが問題だなと。

・継続した支援のところで、行政機関につなげる必要があるが、本人が障害の特性をどのように理解しているかわからないというところで、本人やご家族に困り事が出た時などきっかけがあった時に介入していく、その機会を捉えて関係機関がつながっていくのが大事なのではないかという意見が出ました。

・あと、お母さん自身が息子さんの障害を認めたくないという思いがあるのではないかというところで、お母さんがそういう思いになった根本原因を知ることで、適切な支援の側につなげることができるんではないかなという意見が出ました。

・このケースは家族含め関係機関にあちこち「掠っとる」状態。そこで今回MSWさんのように、ちょっと関係機関につなげる一歩を踏み出していく、多職種・関係機関が踏み出していくことでつながっていくのではないか。

・発達障害であろうが引きこもりであろうが人であることは同じなので、まずは気になったら声をかけるということが大事なのではないか。その意味で今回のケースは「成功体験」と言えるのではないか。



 <5グループ>

・やはり私たちのところでも、経済的な困窮ですとか、健康管理の面ですとか、色んな面でご家族の方々、心配だなというお話がたくさん出ておりました。その中でどこに課題があるのかを見極めてつなげていくということが大事なんだと思いました。

・ご家族にも、地域の中での長い歴史、生活の歴史があると思いますので、その中で、民生員の方ですとか地域のキーパーソンの方が、どう立ち現れて我々にご様子を教えてくださるのかなっていうことも大事だと思いますし、行政の方の印象的な言葉としましては、 高齢の方がいらっしゃったり、障がいの方がいらっしゃったり、ご病気の方がいらっしゃる中で、いろんな入り口があるという捉え方をすることで、支援につながっていくと思いました。そこで支援する方々が情報を連携し合って共有する、チームを組むことで、この方々の支えになる、伴走ができるといいなと。直接的に支援というよりは、伴走していくことで、いわゆる重層的な支援ということができるといいんではないかなというような話が出ました。



【コメント】

〜東近江市福祉政策課 福祉相談支援係 小林亜樹係長より〜

・皆様のご意見、色々聞かせてもらってありがとうございました。まずは、北村さんがすごく丁寧なつなぎをうちにしてくださったことが、本当に感謝しております。なかなかつないでくださること自体が難しいところ、ご本人さんと一見関係ないような、親御さんの入院から拾い上げ汲み取って市担当課につなげてくださったっていうことが、まずありがたいなと感じました。
・その中でうちが支援につなげられなかったのは本当に申し訳なかったなとは思うんですけれども、皆様からいただいた意見の中で、いろんな入り口があるというようなお話もありました通り、高齢者の支援というのを切り口にして、お家に入れるような機会を探ってみる、ちょっと障害需要できてないご家庭もあることは、皆さんからもご意見ありました通りで、もうちょっとマイルドなというか、うちのグループでは、サロンというお話もあったんですけど、 ちょっと軽い居場所で、若者が集まる場所があるよみたいなところのご案内などからできないか、うちの方でも探っていきたいかなという風に、今日参加させてもらって感じました。ありがとうございます。




〜東近江市永源寺診療所  所長 花戸貴司先生より〜

・今回、家族の障害が疑われる事例を発表していただいたんですが、まず我々医療職は、例えば病気があるとか、何か異常があるとかというと、何かこう治療をしなきゃいけないとか、元に戻さなきゃいけないとか、先にゴール設定を決めてしまうことが多いのではないかなということを常々反省しています。例えば、子供さんが働いていなければ働かなきゃいけないのかなとか、手帳を持っていなければ手帳を取らなきゃいけないのかなとか、課題が見つかったら、その課題は解決しなきゃいけないのかなとか、そのようなゴール設定をしてしまうんですが、そういったゴール設定をすること自体が、実は家族にとって、本当にそれが希望されていることなのかどうかを常に考えています。
・例えば、病気も、高血圧や糖尿病など、治療をすれば治る、良くなるという病気もありますし、認知症のような、あまり効果がないというか、治療するというよりもどちらかというと受け入れるというような病気の種類もあります。で、そういった家族の状況も、解決するんじゃなくて、こちら側が受け入れるというようなスタンスもやはり大切なんじゃないかなと思います。でも受け入れるのは、何もしないというわけじゃなくて、ずっと関わり続けるという態度が必要だと思いますので、今回病院のソーシャルワーカーさんがしっかりと市役所につないでいただいたっていうのは、今後、例えばお母さんがいなくなった時に、あー、つながっといてよかったなというようなことになるんじゃないかなと思います。
・だから今問題は解決しなくても、ずっとつながり続ける、何か困った時に、今日小林係長が来ていただいてるんで、何かあればねえねえと連絡すればなんとかなりそうな気が、皆さんこれですると思いますし、今すぐの解決にはならなくても、5年後、10年後に生きていくのではないかということを思いながら、今日の三方よし研究会に参加をさせていただきました。ありがとうございました。



 

【連絡事項】

・第194回 三方よし研究会 令和6215日(木)18:30~20:30

○当番・会場 日野町・日野記念病院 ZOOM活用によるWEBでの開催



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

また次回もお待ちしております。